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「うちの病棟、今年も何人も辞めた」。看護の現場で聞く言葉です。 ただ、これが業界全体の話なのか、その職場だけの話なのかは、 感覚だけでは切り分けられません。まず全国の数字を見ます。
日本看護協会が実施している「病院看護実態調査」の2025年の結果によると、 正規雇用看護職員の離職率は11.0%で、前年度からわずかに低下しました。 前年の調査では11.3%でしたので、大きく悪化しているわけではありません。
11.0%という数字は、単純に言えば「約9人に1人が1年間で職場を離れる」水準です。 決して低くはありませんが、「大半が辞めていく職業」ではありません。
同じ調査で、新卒採用看護職員の離職率は8.4%。前年比0.4ポイントの低下です。
参考までに、大学新卒者全体の3年以内離職率は33.8%(厚生労働省)です。 集計期間が違うため単純比較はできませんが、 少なくとも「看護は他業種と比べて突出して1年目が離職しやすい」という状態ではありません。
| 区分 | 離職率 | 出典 |
|---|---|---|
| 正規雇用看護職員 | 11.0% | 日本看護協会 2025年病院看護実態調査 |
| 新卒採用看護職員 | 8.4% | 同上 |
| 介護職員 | 13.1% | 介護労働実態調査(2023年度) |
数字と感覚がずれるのには理由があります。
11.0%は全国平均です。人員体制や夜勤の負担、教育体制の有無によって、 職場ごとの実際の離職率は平均から大きく上下します。 「自分の周りでは多い」という体感は、正しく自分の職場を表している可能性があります。 つまり比べるべきは、業界平均ではなく平均と自分の職場の差です。
退職は出来事として記憶に残りますが、勤続は日常なので記憶に残りません。 印象の総量では、離職のほうが実際の比率より大きく感じられます。
同じ時期に入った人が同じ時期に悩むため、身近な範囲では一斉に動くように見えます。
数字を判断材料にするなら、その数字が何を数えたものかを知っておく必要があります。 病院看護実態調査の離職率は、おおまかに言えば 1年間の退職者数 ÷ 年度初めの在籍者数です。 ここから、いくつか読み方の注意が出てきます。
つまり、11.0%という数字は「9人に1人が限界を迎えている」という意味ではありません。 そう読むと実態より暗く見えますし、逆に 「自分の病棟の体感が全国平均と違う」ことを軽く扱う理由にもなりません。 全国平均は物差しであって、自分の職場の評価そのものではないという距離感が適切です。
全国平均を知る意味は、「安心するため」ではなく「自分の職場を評価する物差しを持つため」です。 次の3点を確認すると、感覚が判断材料に変わります。
3つ目が特に重要です。離職率そのものより、 「抜けた分が補充されないまま回している職場かどうか」が、これからの働きやすさを左右します。
辞めるかどうかを決める前に、「この職場は平均より離職が多いのか」「欠員は埋まるのか」を 自分の手で概算してみる。それだけで、感情ではなく状況で判断できるようになります。
概算してみて「うちは平均より明らかに多い」となった場合でも、 いきなり退職以外に手段がないわけではありません。 病院という組織は規模が大きいぶん、内部に選択肢が残っていることがあります。
これらを試したうえで変わらないなら、そのときは職場を変える判断に自信が持てます。 「やれることはやった」と言える状態は、次の面接での説明もしやすくなります。
「看護を続けたいが、今の働き方は続けられない」という場合、 資格を活かしたまま環境を変える選択肢があります。 それぞれ求められるものが違うので、負担の質で選ぶことになります。
| 働く場所 | 特徴 | 夜勤 |
|---|---|---|
| クリニック・診療所 | 外来中心。日勤のみのことが多い | 基本なし |
| 訪問看護 | 1対1でじっくり関わる。オンコール対応がある事業所が多い | オンコール |
| 介護施設(特養・老健など) | 医療処置は限定的。生活支援の比重が高い | 施設による |
| 保育園・企業の医務室 | 健康管理が中心。募集数は少ない | なし |
| 治験関連(CRCなど) | 医療知識を使う事務・調整業務。土日休みが多い | なし |
| コールセンター・相談員 | 電話での医療相談・受診案内。身体的負担が小さい | シフトによる |
注意点として、病棟を離れると急性期の臨床スキルは落ちます。 将来的に病棟へ戻る可能性を残したいなら、 ブランクが長くなりすぎない範囲で考えたほうが選択肢は広く保てます。 逆に「もう病棟には戻らない」と決めているなら、この制約は気にしなくて構いません。
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